編集長より
人類の歴史を、人間が道具を使うようになった石器時代から数えるとしたら、200万年経っていると言われている。21世紀の物差しで20世紀を計る人が多過ぎるので、試しに流行りの「人権思想」を絶対的な正義として人類の歴史すべてに当てはめてみた。そうしたら、私の頭の中で「人間は愚かだった」という結論が出た。海賊の存在、魔女狩り、人間を生贄として神に供えた習慣、武士の切腹など、その多くを「愚か」で片付けざるを得なかった。
米国の奴隷制度を例に挙げれば、19世紀半ばまで米国人のほとんどが奴隷制度を肯定していた。合衆国初代大統領ジョージ・ワシントンの孫娘と結婚した軍人、ロバート・エドワード・リーは奴隷制に抵抗を示していた人物であったが、次のように記している。
「この啓蒙の時代に、奴隷制が制度として道徳的また政治的悪であることを認めようとしない人はほとんどいないと私は信じる。その短所を長々と述べるのはつまらない。私は有色人種よりも白人にとって大きな悪だと思う。私の感覚が有色人種のために強く働く一方で、私の同情は白人の方に深く向かっている。黒人は、道徳的、肉体的および社会的にアフリカよりもここの方が遙かに良い暮らしをしている。彼らが経験している苦痛を伴う規律は人種としてさらに教導するために必要であり、より良い状態に進むための準備だと私は願う。彼らの奉仕がどのくらい長く必要かは、慈愛深い神意によって知らされ告げられるであろう」
世の常識に疑問を感じたとしても、それに抗うことは難しい。先述の米国軍人、ロバート・エドワード・リーの、「(奴隷制は)有色人種よりも白人にとって大きな悪だと思う」が、「黒人は、道徳的、肉体的および社会的にアフリカよりもここの方が遙かに良い暮らしをしている」し、「(黒人を)人種としてさらに教導するために必要」なのだ、という言葉がそれを物語っている。まるで自分に言い聞かせているかのようだ。侵略戦争も人種差別もホロコーストも森林の過剰伐採も環境汚染も鯨の乱獲も、その時代その時代、それらに関わった誰もがこの米国軍人のような言い訳をして止めなかったのである。
私たちの人生でも同じことが言える。過去はすべて自業自得。そして「結果」はすべて因果応報。奴隷として生きた黒人は、650年から1900年までの間に、1000万から1800万人のアフリカ人がアラブ人奴隷商人によって奴隷にされ、紅海やインド洋、サハラ砂漠を越えて運ばれたと歴史家は推測している。ここまで被害が拡大したのは黒人が同じ黒人の拉致に協力したからだとも言われている。それがアフリカ大陸で未だに内戦が繰り返される遠因の一つとなっているのである。つまり、今の黒人を過去の黒人が苦しめているのだ。一方の白人も同じで、白人は有色人種に鞭を打ち、白人は自らの残忍さを歴史に刻んだのであった。
そしてここ約半世紀の日本の国民もまた、それを犯した。自らの故郷を汚して平然としてきた。そして今もその子らがそれを真似ている。権力者や一部の特権階級の者と、その末裔は特にそれが顕著だ。その連鎖を止めなければならない。今の日本人が未来の子々孫々を苦しめることがあってはいけない。
最近に起きた代表的な例を一つだけ挙げれば、やはり慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話(河野談話)である。これは確実に後世に禍根を残すシロモノである。事実証拠のない噂を「噂は本当でした」と認めるなど普通では考えられない。日韓の合作だったことも明らかとなったが、その時の日韓関係がいかなる状況であったとしても、日本人であるならば相手の無理強いに対しては「沽券に関わる」として毅然と対応すべきだった。しかしそれも後の祭りである。事ここに至った。いま何よりも重要なのは、再発防止も含め、そういった“事件”を私たち国民がどう解決させるのか、である。
大吼ジャーナルは、世の常識に流されず、権力に媚びず、法のみに頼らず、日本主義に基づいて言論を発信する。各方面からの情報提供を願う。(平成26年4月10日 大吼出版 編集長 小針政人)