
外国人問題は〝きれいごと抜き〟で報道せよ 参院選で覚えた新聞・テレビへの違和感
新聞に喝! 経済ジャーナリスト・石井孝明
(産経新聞 2025/8/31 14:00)
7月の参議院選挙では、外国人問題が本格的な争点として浮上した。外国人の旅行者や居住者の増加には確かにプラス面もあるが、生活でのトラブルが増えて治安への不安が一部に出ている。そうした現場の声をすくい上げて、違法外国人の取り締まりを主張した参政党などが議席数を伸ばし、自公政権は惨敗した。石破茂首相が外国人問題への対応を敗因の一つに挙げたことは記憶すべきだろう。
では、新聞・テレビの対応はどうだったか。一部の報道は外国人問題に消極的であるばかりか、それを選挙で取り上げる政治家に批判の矛先を向ける論調もあった。
「日本人ファースト」を唱え、議席を改選前の2から15に増やした参政党について、東京新聞は7月26日の社説「議席増の参政党 『人権軽視』が目に余る」の中で、「外国人に対する規制強化は根拠が曖昧な上、外国人の生活を脅かす」と指摘した。
朝日新聞は「訪日客増、物価高…生んだ外国人嫌悪」(7月27日)との記事を掲載。生活に不満を持つ大衆が日本人ファーストに共感したと述べ、移民規制を掲げ選挙で躍進したドイツや欧州の右派政党と参政党を重ねた。
ただ、こうした記事からは外国人問題を取り上げる人を「人権意識や勉強が足りない」と説教するような、上から目線を感じざるを得ない。私は参院選期間中、外国人と住民の摩擦が問題になっている埼玉県を取材した。既存政党が軒並み票を減らし、国民民主党、参政党の候補が当選した。取材に応じた50代男性は、既存メディアの外国人問題に対する消極的な報道姿勢に関し「なんで見て見ぬふりを続けるのか」と話した。
欧米諸国は今、大量の移民・難民による社会混乱に直面し、国の姿が変わりつつある。メディアがその問題を伝えないことが、問題を悪化させた一因とされる。同じことが遅れて日本でも起きつつあるのではないか。
社会問題を先んじて知らせることがメディアの役割だ。ところが日本では、外国人問題に関し「多文化共生」「ヘイトはいけない」というきれいごとで報道する傾向がみられる。国民の実感から乖離(かいり)していないか。また既存メディアが外国人問題を正面から報道しないことで逆に不安やデマがネットを通じて広がっている現象もうかがえる。
日本に住む、来る外国人の数は今後も増え、問題は広がっていくだろう。新聞・メディアは日本人と日本の未来のため、正面から問題に向き合い、正確な情報と解決策の提言を、社会に提供してほしい。
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石井孝明
いしい・たかあき 昭和46年、東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部卒、時事通信記者などを経てフリーに。経済・環境情報サイト「with ENERGY」を主宰。著書に『埼玉クルド人問題』など。