
夫婦別姓「参院選で重視は1%、国民は冷静だ」
ジャーナリスト・椎谷哲夫氏は拙速を牽制
ごまかしの選択的夫婦別姓議論
産経新聞 2025/6/10
衆院法務委員会は10日、立憲民主党と国民民主党がそれぞれ提出した選択的夫婦別姓制度の導入を目指す民法改正案と、日本維新の会提出の旧姓の通称使用拡大に向けた戸籍法改正案の計3法案についての参考人質疑を行った。ジャーナリストで皇學館大学特別招聘教授の椎谷哲夫氏は、世論調査の結果をもとに「国民は冷静にみている」と述べ、拙速な議論を牽制した。
◆子供の姓について議論せず
椎谷氏は、報道機関の世論調査で夏の参院選で最も重視する政策を聞いたところ選択的夫婦別姓を挙げたのが1%だったことや、今国会で結論を出す必要はないという人が半数を超えたと紹介し、「国民がこの問題を非常に冷静に考えている。ある意味、国民は冷めている」と指摘した。「時間をかけて議論すれば、一つの方向に収まっていく」と述べた。
夫婦別姓議論について椎谷氏は「『30年間、議論ばかりして結論を出さなかった』『周回遅れの議論をしている』『言い訳は聞き飽きた、早く結論を出せ』と言われているような気がするが、少し違う」と述べた。立民と国民が法案提出に当たり、子供の姓の決め方について従来の考えを変更したことを挙げ、「子供の姓がこの問題の核心、要点だということは分かっていたはずだ。30年間議論ばかりしていたのではなく、30年間、子供の姓の問題を何も議論してこなかったのではないか」と疑問視した。
◆経団連、マスコミに苦言
経団連にも苦言を呈した。経団連は昨年6月に公表した選択的夫婦別姓制度導入を求める提言について、理由として挙げたビジネス上の課題の多くが実際には解消済みだと判明し、今年5月に修正した。椎谷氏は「(内容が)一人歩きして、国も政府も役所も何もしてないという印象を持っている国民は多いと思うが、実態は違う。非常に責任は重い」と述べた。
世論調査ではおおむね、「選択的夫婦別姓を導入すべき」「夫婦同姓を維持し旧姓の通称使用を拡大する」「夫婦同姓の現行法制を維持する」の3つの回答が近い数字となっている。椎谷氏は「賛成か反対かの結論しか、文章で使わないところが多い。実際はそうではない。マスコミも含めて反省が必要だ」と訴えた。「国民の分断を避ける」ために旧姓使用拡大に向けて内閣が法案を提出することも検討すべきとの認識を示した。